聖福寺の塔頭寺院で加藤司書の墓と美術展を見る/節信院

福岡市博多区御供所町にある大寺院・聖福寺。その塔頭寺院である臨済宗妙心寺派・節信院は幕末福岡を代表する討幕志士・加藤司書の菩提寺でもあります。

加藤司書とは

実は薩長同盟成立の立役者

加藤司書は幕末に活躍した討幕派の福岡藩士です。文政13年(1830年)、福岡藩家老の家に生まれた司書はわずか11歳で加藤家11代目2800石を継ぎ、福岡藩中老となりました。その後、安政3年(1857年)に福岡藩執政に就任した司書は尊王攘夷派(討幕派)の中心人物となります。当時福岡藩は討幕派と佐幕派で揺れており、藩政内での政争が激しくなりつつありました。そんな中司書は大宰府で西郷隆盛や坂本龍馬、高杉晋作らと密談を行い薩長同盟実現に向けて活動を行っていました。しかし、幕府が長州討伐を決めたことにより福岡藩は佐幕派が優勢となり、司書ら討幕派は乙丑の獄と呼ばれる弾圧事件によって慶応元年(1865年)、切腹に処されてしまいました。

加藤司書の墓を観に節信院へ

大寺院である聖福寺の一角にある

薩摩や長州、土佐に比べて幕末では影が薄い福岡藩の中で、討幕により時代を動かそうとした加藤司書。今回は幕末福岡で唯一といっても過言ではない有名人である司書の墓に参拝するため、節信院にやってきました。

聖福寺の伽藍の隅にある節信院は14世紀ごろ、福岡藩士・加藤重徳を開基とし、臨済宗の僧侶・月庭禅師によって建立されました。境内には美しい庭園を備え、子安観音像や観音堂などを備えています。

子安観音像と観音堂

立派な子安観音だが作られたのは結構最近

山門をくぐってすぐ左手、何故か少し奥まった場所に建てられている子安観音像です。様々な寺院でその姿を見ることができますが、2009年に奉納された節信院の子安観音像は2018年現在でもきれいな姿を保っています。子どもを抱いた観音像には安産、子どもの安全のご利益があるとされています。

かなり大きな観音堂がある

子安観音のすぐ先には観音堂があります。こちらは一般公開されておらず、御供所町の寺院を地元電機店がライトアップするイベント・博多ライトアップウォークでその姿を見ることができます。

美しい庭園と本堂

キレイに整備された庭園

観音堂のさらに先に、節信院は本堂を構えています。禅宗寺院の特徴である見事な枯山水は丁寧に整えられており、岩と木、建物の配置が非常に美しい庭園です。本堂は伽藍の幅いっぱいに建てられていて塔頭寺院とは思えないほど迫力のある建物でした。

どこもかしこも金色の本堂

本堂内を撮影させていただきました。絢爛な薬師如来像と両脇に脇侍を配置した釈迦三尊を祀っています。薬師如来は病気平癒のご利益があり、阿弥陀如来と並んで日本で多く信仰されている如来です。

加藤家墓所へ

加藤司書一族の眠る墓

本堂の裏手には加藤家の墓所があります。中央に位置しているのが加藤司書の墓です。司書の墓の脇には石碑が建てられています。

宮内省から官位を受けている

贈正五位加藤司書
明治二十四年十二月十七日
宮内省

これは大政奉還後、天皇家が司書に官位正五位を贈ったことを示すものです。幕府に変わり政権を握った新政府(朝廷)は維新の功労者に対して幕府から課せられた罪を放免し、新政府体制における地位を与えました。

司書の詠んだ句

皇御國(すめらみくに)の武士(もののふ)はいかなる事をか勤むべき、只身にもてる赤心(まごころ)を君と親とに盡(つく)すまで

こちらの石碑には司書の書き留めた有名な筑前今様が刻まれています。司書は文学に長けており辞世の句も残していますが、そちらは乙丑の獄で切腹をした場所である天福寺跡(現博多区冷泉町)に上の筑前今様と一緒に石碑として残っています。

庫裡はイベントスペース

取材時には個展が開催されていた

偶然にも取材当日は節信院庫裡で福岡在住の画家、平松宇蔵氏とグアテマラで活動するアーティスト、マリア・フェルナンダ・カルロス氏の作品展「色空」が行われていました。

平松宇蔵
福岡市在住。
広告プロダクションを勤務を経てイラストレーターとして独立。後年、美術家に転向する。現在、個展などでの作品発表を中心にホテルのロビー、客室の絵画、マンションエントランスの壁画制作、ペインティングパフォーマンス、他、様々なジャンルで表現活動を行っている。(色空公式サイトより引用)

Maria Fernanda Carlos
絵画、インスタレーション、写真など多分野で制作活動を行うグアテマラ在住のアーティスト。ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ校、ポストグラデュエート・ディプロマ課程を2009年に取得。
ロンドン、米国、メキシコ、ペルー、コロンビア、中米全土で作品を発表している。(色空公式サイトより引用)

節信院では庫裡をイベントスペースとして貸し出しており、定期的に個展や演奏会が行われています。

テーマは般若心経…らしい

今回行われていた作品展では節信院が属する臨済宗で日用経典として重視されている般若心経がテーマでした。

庫裡全体がギャラリーになっている

庫裡内では約20点の作品が展示されているほか、ライブペインティングの実演も行われており、大変見ごたえがありました。庫裡で行われるイベントは節信院のFaceBookページで告知されています。
節信院FaceBookページ

加藤司書の墓所を見学に訪れた節信院でしたが、子安観音像、枯山水の庭、庫裡で行われている作品展など他の見どころも多く、非常に満足度の高い寺院でした。もちろん、宮内庁から贈られた官位を記念する石碑や筑前今様の碑など、司書についての史跡も多く見ることができました。聖福寺の伽藍には節信院の他にも円覚寺、広福庵、瑞応庵、護聖院、幻住庵、西光寺など多くの塔頭寺院があり、少ない移動距離でお寺巡りを楽しむことができます。博多に遊びに来た際は御供所町で聖福寺を中心としたお寺巡りもおすすめです。

節信院
住所:福岡県福岡市博多区御供所町11-20
TEL:092-281-4182
宗派:臨済宗妙心寺派
アクセス:地下鉄空港線祇園駅から徒歩6分
西鉄バス緑橋停留所から徒歩2分