人魚の骨と神社があるお寺/冷泉山龍宮寺

福岡市博多区の冷泉町、祇園交差点のそばにある冷泉山龍宮寺は平安時代末期に創設された歴史あるお寺です。鎌倉時代には人魚を埋葬したという伝説が残されており、本殿には人魚の骨とされる寺宝も祀られています。またこのお寺は伽藍の中に神社を構える珍しい構造をしており、派手ではありませんがとても見どころの多い、知る人ぞ知る観光名所となっています。

大通りに面した人魚寺

福岡市最大の大通り沿いにある

大博通り沿いに建つ龍宮寺は地下鉄祇園駅からすぐ、西鉄バス祇園町停留所の正面と非常に交通の便が良く、櫛田神社や寺院の立ち並ぶ御供所町も近いことから多くの観光客が訪れます。

お寺の中の神社「三宝荒神堂」

お寺の中に神社がある

山門を入ると三宝荒神という神様を祀る神社があります。三宝荒神は神道における神ではなく、伽藍(お寺の敷地)の守護神とされる仏教の神です。本来は寺院の中に小さな祠を設けて祀っていましたが、神仏習合の中で神道の神と合祀・同一視された結果、神社様式のお堂を構えるようになりました。三宝荒神を祀る荒神堂は全国に400社ほどしかなく、お寺の伽藍の中の荒神堂は福岡県ではこの龍宮寺でしか見ることができません。

連日の猛暑ですっかり干上がった手水舎

きちんと手水舎も備えていますが取材日は連日の晴天で干上がっていました。

イカツめなデザインの狛犬

神社様式なので狛犬も阿形吽形それぞれが設置してあります。ちなみに現在拝殿の前にある狛犬は2代目です。

ボロボロになった初代(?)狛犬

初代は山門のすぐ裏側に置いてあります。原型をとどめないほどボロボロになっていました。いったい何があったのでしょうか…
かなり古いものらしく、台座の文字もすべて潰れていて読むことができませんでした。

鳥居は補修されずにいた

こちらが三宝荒神堂の拝殿。手前にある柱は倒壊した鳥居だそうです。

ご神体が微妙に見えない

拝殿の中を撮影させていただきました。普段は垂れ幕が張られており、ご神体を見ることはできませんが毎年4月に行われる蚤市・荒神の市でご開帳されます。

伽藍の守護神である荒神様ですが神仏習合の末、火の神、台所の神ともされ、人々の信仰を集めています。また、祟り神ともされており、室町時代の守護大名であった大内政弘が筑前(福岡)を平定した際に真っ先に参拝に訪れたと言われています。

ようやくお寺らしいところを目にした気がする

拝殿の脇には石仏が並んでおり、ようやくお寺らしい部分を目にすることができました。

博多七観音の1つ、聖観世音

博多七観音に数えられている有名な観音堂

荒神堂の裏にはお墓が並んでおり、その脇を抜けるともう一つ小さなお堂があります。こちらは観音堂と呼ばれていて、聖観世音菩薩像を祀っています。

立派な観音像が並んでいる

観音堂の中を撮影させていただきました。中央が聖観世音像で4体の侍像を設けている徳の高い観音様です。苦難除去、現世利益、病気平癒、厄除け、開運、極楽往生などとても幅広いご利益があるとされています。この聖観世音は博多七観音(大乗寺観音、妙楽寺観音、龍宮寺観音、聖福寺観音、東長寺観音、観音寺観音、乳峯寺観音)の一つとして昔から多くの人の巡礼の場となっています。博多七観音はすべて徒歩10分圏内と近い位置にあるので現在も気軽に巡礼することができます。

実はこれが本堂

観音堂の向かいにあるこちらのビルが寺務所と納骨堂と本殿を兼ねた建物で、龍宮寺の御朱印を頂くことができます。また、寺宝として後述する人魚の骨を保管しており事前に連絡して都合がつけば見学することもできます。

龍宮寺の人魚伝説

冒頭でも述べた通り、龍宮寺には人魚を埋葬したという伝説が残っています。真偽のほどはわかりませんが、地下鉄空港線開通工事の際に地下から巨大な動物の骨が発見されたとの噂もあります。

このブログでは登場頻度の高い筑前名所図会

貞応元年(1222年)博多港で漁師の網に巨大な魚が掛かりました。その体長は81間(約150m)にも及んだと言われています。住人はすぐに朝廷に報告、事態を重く見た朝廷は官職である冷泉中納言と安倍大富という博士を派遣します。冷泉中納言が検分したところ、巨大な魚は人魚であると判明しました。

日本の人魚は魚比率が高い

人魚の肉には不老長寿の効能があるという言い伝えから当初住民は人魚を食べようとしていましたが、安倍大富が占ったところ人魚は国家長久の吉兆であると出たため中納言と大富が滞在した寺院に手厚く葬ることになりました。

当時も観光名所だったのだろうか

博多古図には人魚が揚がった場所と冷泉中納言らが滞在した寺院が記されています。浮御堂と呼ばれていたその寺院は人魚を埋葬したことから龍宮寺と寺号を変え、埋葬を行った冷泉中納言にちなみ山号を冷泉山としました。また、現在の冷泉地区の名前も冷泉中納言が滞在したことに由来しています。

人魚の骨は太かった

本殿に保管されている人魚の骨です。江戸時代には祭りの際に不老長寿の効能にちなんで、骨をタライの水に浸してその水を参拝客に振舞っていたそうです。調査の結果、大型哺乳類の骨であることがわかっており、沖縄地方以南に生息しているジュゴンの骨であるという説が有力です。

日本で唯一人魚を埋葬しているお墓ではないだろうか

荒神堂と観音堂のちょうど中間に人魚を埋葬した記念碑である人魚塚の石碑があります。この石碑は昭和33年に再建されたもので、最初に建てられた石碑は参拝客が人魚のご利益を少しでも受けようと削って持って帰った結果、ほとんどなくなってしまったそうです。

近辺の大寺院に比べるとあまり大きくない龍宮寺ですが、荒神堂、観音堂、そして人魚の骨とたくさんの見どころがあります。人魚の骨の見学は応相談とのことでしたので、参拝される際は事前に本殿を見学させていただけるか電話で確認しておきましょう。

また、毎年4月に行われる荒神の市では三宝荒神のご開帳や出店、フリーマーケットなど様々な催しが行われています。近隣の方はもちろん観光で来られた方もぜひ立ち寄ってみてください。

荒神の市の様子や開催情報はFaceBookで見ることができます
FaceBook荒神の市公式ページ

冷泉山龍宮寺
場所:福岡県福岡市博多区冷泉町4-21
TEL:092-291-1003
宗派:浄土宗鎮西派
アクセス:地下鉄空港線祇園駅から徒歩2分
西鉄バス祇園町停留所からすぐ

地図