街中にある子宝・安産祈願の神社/若宮神社

福岡市中央区の中心を通る国体道路沿いにひっそりと建っているのは天平年間(729~749年)に創建された若宮神社です。当初、萬町(現舞鶴1丁目)に建立されましたが正徳3年(1713年)に現在地に移築されています。周囲はアップルストアやビックカメラ、ドン・キホーテなどがあり、人通りも車通りも多いにぎやかな地域です。

国体道路の面した鳥居

若宮神社は豊玉姫神(とよたまひめ)を祭神として祀っています。豊玉姫神は古事記に登場する女神で大和国を建国した神武天皇の祖母とされています。豊玉姫神は子宝・安産、縁結び、航海安全のご利益があるといわれていますが若宮神社では特に子宝・安産の神として祀られています。

境内の様子

奥まった本殿に向かって参道が伸びている

境内に足を踏み入れると都会の喧騒とはかけ離れた静かな空間が広がっています。社殿の隣は駐車場になっていました。

向かって右手の建物は社務所

入ってすぐ右手に大きな社務所が建っています。この日は神職の方が不在でしたが、写真奥の窓口でお守りを買ったり、御朱印を頂くことができます。

阿吽形の狛犬は顔を鳥居側に向けるようにして作られています。まるで参拝者を歓迎してくれているようです。また、狛犬が手水舎の手前にある珍しい構造をしています。若宮神社が改築を行った際、縦に広い敷地を活用するため社殿の前にあった鳥居を国体道路沿いに移築して新たに参道を作りました。そして新しい社務所と狛犬を作ったものの、手水舎は以前のものを使用したため、手水舎の前に狛犬があるという配置になったそうです。

手水舎には子安貝のオブジェが

狛犬の後ろに建つ手水舎には中心に子安貝をかたどった石像があります。若宮神社では手を清めた後、この子安貝に柄杓で水をかけて子宝や安産を祈願します。

拝殿前にはもう一対の狛犬

拝殿の手前にもう1対の狛犬がありました。この狛犬が改築前の狛犬です。大きさは現在のものより2回りほど小さいですが、今でも移動や廃棄されずに本殿を守り続けています。

旧社務所

右手の古い建物が旧社務所です。現在は使われていないようで、窓口はふさがれていました。

若宮神社の由緒書き

旧社務所近くに、木製の古語で書かれた由緒書きと金属製の新しい由緒書きがありました。建立当初は境内に末寺として施薬山延寿寺というお寺があったようですが明治時代に廃寺になっています。お寺の末社として神社が置かれている場合が多いですが若宮神社は逆だったようです。

拝殿・本殿は改築されず残っている

拝殿は改築されていないのか歴史を感じる佇まいをしています。シンプルな神社様式の建物で江戸時代に現在地に移築した時と変わらない姿を見せてくれました。子宝・安産の神として信仰を集めている若宮神社ですが、延宝6年(1678年)に福岡の街が大火に見舞われた際に社殿とその周辺家屋は火災を免れたことから、火難水難除けの神としても知られています。

拝殿内部は見た目に反してキレイ

拝殿内を撮影させていただきました。内側は壁や床が貼りかえられていて真新しい木の香りが漂っています。年始にはこの拝殿で厄払いの神事が行われているそうです。

楠の巨木がたくさんある

入り口付近にある楠

社務所の正面に巨大な楠が2本並んでいます。どちらも高さ20m近くあり、右側の木は幹もかなりの太さです。この2本を含め、若宮神社には全部で5本の楠の大木があり、そのすべてが福岡市の保存樹に指定されています。

こちらは旧社務所裏

保存樹は寺社や民家、街道の歴史ある巨木を後世に残すため、市が指定しており、選定などに補助金を出しています。基準は高さ15m以上、幹周りが1.5m以上の木で、若宮神社にある5本の楠はすべて基準を満たしていました。広大な敷地の筥崎宮にある保存樹が全部で20本、1/10ほどの敷地しかない若宮神社に5本なので保存樹が密集していることがわかります。

西鉄天神駅からもほど近い場所にある若宮神社は中央区の中心付近でありながらとても静かで心安らぐ空間になっています。境内は改築によって他の神社にない珍しい構造をしており、手水舎の子安貝や巨大な楠など見どころもたくさんありました。また、楠は葉の密度が高いので境内はほぼ木陰になっています。取材当日は気温が30度を超えていましたが非常に涼しかったので、買い物の際の休憩に訪れてもいいかもしれません。

若宮神社

住所:福岡県福岡市中央区今泉1丁目19
TEL:なし
御祭神:豊玉姫神
アクセス:西鉄天神駅から徒歩5分
地下鉄七隈線天神南駅から徒歩5分

地図