福岡土産として人気の博多通りもん。福岡の老舗和菓子メーカー「明月堂」が販売しているヒット商品です。お土産として喜ばれますが、福岡在住でも好きな方は多いのではないでしょうか。もちろん、筆者も大好物でよく食べます。そこで、この銘菓を自作できれば、安く、好きな時に、好きなだけ食べることができると考え、実際に作ってみることにしました。
材料を考える
通りもんの原材料はこのように書かれています。
白生餡(隠元豆)、砂糖、小麦粉、バター、マルトース、卵、水飴、加糖練乳、 脱脂粉乳、生クリーム、蜂蜜、トレハロース、膨張剤、香料
意外と原材料の種類は少なめです。白餡、砂糖、小麦粉、バター、卵、水飴、加糖練乳、脱脂粉乳、生クリーム、蜂蜜はスーパーで簡単に手に入れることができます。聞きなれない材料のマルトースは麦芽糖、つまり水飴の主成分です。なぜ表記を分けているかはわかりませんがここでは水飴と同義ということにします。トレハロースは甘みを強く感じる人工甘味料なので砂糖を多めに使うことで解決します。膨張剤は恐らくベーキングパウダーか重曹だと思うのでどちらかを使いましょう。香料はさすがにどうしようもないので割愛します。
というわけで今回用意した材料です。ここから最良の素材、分量を探っていきます。原材料は分量順に表記されている場合がほとんどですが、この記載のされ方ではどの材料が生地でどの材料が餡なのかが一切わかりません。大変な作業になりそうです。
生地を作る
完全に手探りですが通りもんは「傑作饅頭」と銘打ってあるのでとりあえず饅頭を作るイメージで分量を量っていきます。
パターン①
・薄力粉100g
・卵1個
・砂糖80g
・加糖練乳50g
・蜂蜜20g
・脱脂粉乳15g
・生クリーム30g
・重曹1g
どうもこの分量だと生地が緩いようです。少し触ってみましたが成型できる気がしないので小麦粉を足していきます。
パターン②
・薄力粉150g
・卵1個
・砂糖80g
・加糖練乳50g
・蜂蜜20g
・脱脂粉乳15g
・生クリーム30g
・重曹1g
50gの小麦粉を足したところ今度は水分が減りすぎました。通りもんの生地は甘いイメージがあるので練乳の分量を増やしてみます。
パターン③
・薄力粉150g
・卵1個
・砂糖80g
・加糖練乳70g
・蜂蜜20g
・脱脂粉乳15g
・生クリーム30g
・重曹1g
練乳を20g足したところ、そこそこの硬さに。生地はこれで完成とします。
出来上がった生地はラップに包んで冷蔵庫で30分ほど寝かせます。冷やすことで固くなって扱いやすくなります。
餡を作る
通りもんのメインといえばやはり餡です。実物はバターの香りが強いミルク餡なのでバターと練乳を白餡に加える方向で作ります。
パターン①
・白餡300g
・バター150g
・加糖練乳50g
・水飴20g
・生クリーム30g
材料をすべて鍋に入れ弱火で加熱します。焦げないように鍋に付きっ切りです。
味はかなり近くなりましたがさすがに緩すぎてこのままでは包むことができません。また、油を入れすぎたため生地に包んで加熱した際に油分が分離して生地に染み込んでしまう可能性もあります。作り直しましょう。
※失敗した餡はトーストに塗って食べるとおいしかったです。
今度は水分、油分を減らして作っていきます。
パターン②
・白餡300g
・バター20g
・加糖練乳20g
かなりシンプルになりました。使用した白餡自体にかなり水分が含まれていたので長めに加熱して水分を飛ばします。焦げ付きを防ぐため水飴を外しました。
少し加熱しすぎてしまいましたが包みやすい固さに仕上がりました。バターの風味もあり、及第点の仕上がりです。
成型する
生地を冷蔵庫に入れてから餡を作ったのでうっかり1時間ほど経ちましたが準備ができたので早速包んでいきましょう。
まな板に打ち粉をして生地を細長く伸ばしてカット。今回は8等分にしました。
カットした生地を丸く広げて同量の餡を包みます。
包んだら表面に破れている部分がないかを確認しつつ平たく成型します。過熱前ですがなんだかそれっぽくなってきました。
加熱方法
本物の通りもんの茶色い見た目からして、焼いているのは間違いありません。しかし焼いてしまうとあのしっとりとした食感は出せないのではないかと考えたので今回は焼き、蒸し、焼き+蒸しと3通りの加熱方法を試してみたいと思います。
焼き
柔らかい触感を出すためには水分が必要だと考えたので耐熱容器にお湯を入れて焼いている間も水蒸気を発生させる方法で焼いていきます。180度に予熱したオーブンで15分加熱しました。
蒸し
普通の饅頭を作るように蒸していきます。こちらは中火で10分ほどの予定でしたが10分蒸して取り出そうとした際、生地が生っぽかったため追加で5分蒸しました。
焼き+蒸し
蒸した後表面に色を付ける程度に焼けば本物を再現できるのではないかということで、中火で10分蒸した後、先ほどと同様耐熱容器のお湯と共に180度のオーブンで5分焼きました。
焼きあがったものを見ると、どれも通りもんとは程遠いただの饅頭でした。特に水分が不足している気がします。生地が水分を含めばもう少しそれらしくなるのではないかと考え、加熱後すぐにラップをして放置する作戦に出ることに。仕上がりに不安しかありません。
本物と比べてみる
加熱した自作通りもんにラップをして常温で放置すること半日が経ちました。それぞれを確認する前にまずは本物の通りもんから見てみましょう。
駅のお土産屋で通りもんを1個だけ買うというのは精神衛生上非常に良くない行為です。店員さんが1個108円の通りもんを丁寧に紙袋に入れてくれた辺りで罪悪感が限界を迎えました。
皆さんご存意の博多通りもんです。運ぶ最中に皮が破けてしまっていました。それだけ繊細で薄い皮だということがわかります。
断面はこのような感じ。皮の薄さが均一で、たっぷりの餡にしっかり密着しています。
それでは自作通りもんを本物から遠い順に見ていきましょう。
第3位 普通の饅頭(蒸し通りもんモドキ)
見ての通り普通の饅頭になりました。しかも皮がかなり固いです。
断面はこんな感じです。分厚い上に目の詰まった皮は干からびた饅頭を食べているようで普通に不味かったです。少なくとも蒸しは間違っていることがわかりました。
第2位 蒸し+焼き通りもんモドキ
破けているのは加熱直後にラップで包んだせいです。蒸したものに比べると若干焼き色がついたように見えますがやはり見た目は固そうな饅頭といった様子。
断面も蒸したものとあまり違いがありませんでした。蒸し→焼きの工程を踏んだせいか表面に油が浮いていて不味そうです。味も蒸したものをさらに乾かした味で非常に喉が渇きました。
第1位 焼き通りもんモドキ
第1位としましたが色が若干近い程度で味は他と大差ありませんでした。無理やり若干近いと評した見た目もどちらかというとあんパンです。
断面は完全にあんパンです。他2種類よりは皮が薄くなっていますがその分目が詰まっており、不味いあんパンを食べているようでした。
結論:傑作饅頭はただの饅頭ではなかった
通りもんは自ら傑作饅頭と名乗っているので饅頭と同様の作り方をしましたが、完全に間違いでした。この膨らみ方を見ると焼き目をつけるために生地に混ぜた重曹は不要だったことがわかります。また、生地は限界まで薄くすべきでした。つまり、薄くしても破れたりしないように小麦粉の割合を増やす必要があったようです。コーンスターチを追加しても良かったかもしれません。そして、何より失敗だったのが餡の水分が思った以上に飛んでいたことです。もともと水分を飛ばし過ぎてはいましたが、加熱の際に思っていた以上の水分が蒸発してしまっていました。しかし、餡の水分を増やすということはその分包みづらくなったり焼いている途中に蒸気で膨張して皮を破いてしまうということなので抜本的な包み方の見直しと加熱温度、時間の変更が必要となります。
大不評
更なる改善点を見つけるため友人を呼んで試食会を行いましたが、非常に厳しい意見が噴出しました。特に皮が乾燥している、固いとの声が多く、「饅頭のなりそこない」「一瞬で口から水分を奪う」「シンプルに不味い」と散々でした。考えた結果、レンジでチンすると食べれるようになるという結論に行きつき、温めた状態で作った分すべてを消費しました。どんどん通りもんから離れていきます。
温める際には先日Twitterで話題になっていた肉まんをマグカップで温めるのと同様の方法を使うとふかふかに仕上がりました。
深夜になったので簡単飯テロ講座です。スーパーで売ってる肉まん、便利ですが正直皿やラップを使うのが面倒。そんなとき簡単な蒸し方です。マグカップに少量の水を入れ、上に肉まんを乗せてそのままレンジで2分、ふっかふかの肉まんが出来上がります pic.twitter.com/qAblwPmImA
— 七六@ダンぼるコミカライズ連載中 (@nanaroku76) 2016年1月31日
ちなみに今回かかった材料費は2,981円と、通りもんおよそ24個分となります。ご査収ください。