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全部知ってる?福岡県民も知らない博多弁

日本各地にある「方言」ですが、福岡県で博多弁をはじめとして北九州弁、筑豊弁などが使われています。
特に博多弁はさまざまな方言のランキングで上位を獲得するなど、全国的にも人気の高い方言です。

博多弁は主に現在の福岡市の博多部で使われている方言です。現在では筑紫地区や糸島地区、粕谷地区でも広く使われるようになりました。
他県の方は福岡の方言と言えば博多弁をイメージする方も多いのではないでしょうか。
アクセントは標準語と近いものがあり、「っちゃん」「〜やけん」「~たい」などに代表される独特の語尾が特徴です。

人気の高い博多弁ですが、調べてみると県外の方はおろか県民も知らないような難解な言葉も多く見受けられました。
今回は、そんな「難しい博多弁」をご紹介します。

難しい博多弁

博多弁は現在の博多区を中心に使われる方言

博多弁の難しさと言えば、「なおす」や「とっとーと」などがよく例として挙げられます。
しかし、他にも福岡県民でさえ何を言っているのかさっぱりわからない言葉がいくつもあります。
古い言葉も多く、現在ではなかなか耳にする機会はありませんが年配の方と会話する際に聞いてみると面白いかもしれません。

福岡県民も知らない博多弁No,1「けそけそする」

「落ち着きがない」という意味のけそけそするは博多のほかに島根県の一部や大分県でも使われる言葉です。
標準語にすると「そわそわする」と同じような使い方をします。
古い博多弁でなおかついい意味で使われない言葉なので現在は耳にする機会も減ってしまいました。

使用例

・けそけそしようけん、こぼすったい(落ち着きがないから、こぼすんだよ)
・けそけそしなさんな(落ち着きなさい)

福岡県民も知らない博多弁No,2「こまめる(細める)」

「こまめる」は「両替する」という意味で特に額の大きな紙幣や硬貨をより小さなものに崩すときに使われます。
今でも使う人はそれなりにいますが、伝わらない場合も多いようです。
漢字で書くと「細める」となり、「ほそめる」と混同してわかりづらくなってしまうので注意が必要です。

使用例

・千円札ば、こまめちゃらんね(千円札を両替してくれませんか)

福岡県民も知らない博多弁No,3「しかぶる(仕被る)」

少々汚いですが、「糞尿を漏らす」という意味の「仕被る」は博多をはじめ福岡地方や下関の方面でも使われます。
「たれ被る」という使われ方をすることもありますが、どちらかというと「仕被る」を使う人の方が多い印象です。
主に幼児に使われる言葉ですが、「知ったかぶりのたれ被り」という知ったかぶりをする人を罵る言葉があるように人を批難する際に使われることもあります。

使用例

・こいつ、しかぶっちょる(こいつ、漏らしてる)
※あくまで漏らすのは糞尿のため、水漏れなどには使いません

福岡県民も知らない博多弁No,4「じゃらつけつけつけつのあな」

「じゃんけんの掛け声」です。古い言葉で、戦後期に使われていたといわれていますが由来などは一切わかっていません。
しかし、「けつのあな」という表現は大阪や北海道、岐阜などでも使われていたらしく、ある種全国共通の掛け声だったのかもしれません。
ちなみに現在では「じゃいけん、しっ(しっ、で手を出す)」が博多弁のじゃんけんとして知られており、実際にこちらを使う人も多いようです。

使用例

現代で使っている人はほぼいませんし、下品なので使わないほうが無難です。

福岡県民も知らない博多弁No,5「そうつく」

「うろつく」という意味の博多弁です。高知や愛媛などの四国と福岡大分で使われています。
「さまよう」や「さすらう」からきた言葉ですが、旅をするようなニュアンスはなくなっており、(近辺を)歩き回るといった意味で使われることが多い言葉です。
最近では街コンや街歩きのイベントで「○○(地名)そうつこう!」といったタイトルやキャッチコピーで見かけるとも多くなりました。

使用例

・こげな時間まで、どこそうつきまわりよったと?(こんな時間まで、どこをうろついていたの?)
・山をそうつく(山を歩く)

福岡県民も知らない博多弁No,6「ぱげる」

博多弁で「壊れる」を意味します。博多のみで使われる言葉の様で、比較的近い大分や佐賀では使用されていません。
博多弁では「かろのうどん(角のうどん)」といったように文中で言葉の発音が変わる場合があり、「ぱげる」も文中で発音が変化したものが定着したと考えられます。
また、意味や使い方は同じですが「ぱげる」にかわり「ちゃげる」や「こっぱげる」を使う地域もあります。

使用例

・ゲーム機がぱげた(ゲーム機が壊れた)
※ちゃげる、こっぱげるも活用含めて同じような使い方をします

福岡県民も知らない博多弁No,7「つやつける(艶付ける)」

「格好つける」という意味で、関西圏の方言として有名な「いちびる」同様に有名な言葉です。
主に批難する意味合いで使われることが多いですが、上京した福岡出身者が帰郷した際に軽口として言われるパターンも多く見られます。
単に「つや」という形で使われることもあり、その場合も「格好つける」という意味合いになります。

使用例

・あいつ、すぐつやつけるやん(あいつ、すぐ格好つける)
・なに、つやーにしとうとね?(なに格好つけているの)

福岡県民も知らない博多弁No,8「ぬすくる(塗すくる)」

「なすりつける」を意味する博多弁です。文字にすればわかりやすいですが、話しているときに使われるとかなり分かりにくい言葉の一つだと思います。
もともとは浮世草子など、江戸時代の文献に使われていた言葉でしたが口語としては次第に廃れていき博多と山口県の一部でのみ使われる言葉となりました。
本来は「(罪を)なすりつける」意味でしたが、現在では博多・下関共に「(汚れなどの付着物を)なすりつける」という意味で使われています。
一方熊本では「知らん顔をする」という意味で使われるので博多弁の中でも特にややこしい言葉に分類されます。

使用例

・手の汚れをシャツにぬすくった(手の汚れをシャツになすりつけた)

福岡県民も知らない博多弁No,9「わるそう(悪僧)」

「わるさ」「いたずら」といった名詞と「わんぱく」という意味の形容詞で使われる言葉です。
本来「悪僧」と言えば僧でありながら戒律を破る破戒僧や武芸に秀でた強い僧という意味ですが、博多ではかなりマイルドなニュアンスになっており、主に子どものわるさ、いたずらに対して使われます。

使用例

・わるそうする(いたずらする)
・悪僧坊主(わんぱく小僧)

福岡県民も知らない博多弁No,10「ほとびらかす」

「ふやかす」を意味する博多弁で、高齢者層が主に使います。
語源は平安時代に書かれた伊勢物語などに見られる「ほとぶ」で、これは米などが水を吸って「ふとぶ(太ぶ)」ことが転じて使われるようになりました。
山口県ではふやけた状態を「潤びる(ほとびる)」と言いますが、「ほとびらかす」という使い方をするのは博多だけのようです。

使用例

・米を水につけてほとびらかす(米を水につけてふやかす)
・長風呂して指がほとびれた(長風呂して指がふやけた)

福岡県民も知らない博多弁No,11「ふてえがってえ」

主に驚いたときに口にする感動詞で、標準語だと「びっくりした」といったところでしょうか。
福岡の伝統芸能である「博多仁和加」の決まり文句で、劇中では「ふてえがってえな、どーじゃろかい(これは驚いた、どうだろう)」という使われ方をします。
江戸時代から続く伝統芸能からきた言葉なので現在はほとんど使われることはありません。

使用例

・ふてえがってえな、どーじゃろかい(これは驚いた、どうだろう)
※日常生活で使う場面はあまりありません

口頭だとわかりづらい博多弁

文字にすると伝わるが口頭では伝わりづらい言葉も多い

博多弁は語尾が独特の訛り方をしたり、文中で文字の発音が変わるなど口頭だと意味が分かりづらい表現が多くあります。
ここからは、知っているとネイティブ博多弁話者とスムーズに会話ができる、そんな言葉をご紹介します。

口頭だとわかりづらい博多弁No,1「まどう(償う)」

読んで字のごとく「つぐなう」という意味ですが、博多では償うと書いて「まどう」と読む場合があります。
意味は同様なので何か悪いことに対して「まど-う」という言葉があれば「償う」という意味だと考えましょう。

使用例

・皿を割ったのでお金でまどう(皿を割ったのでお金で弁償する)
※罪を償うより弁償する時に使われることが多い

口頭だとわかりづらい博多弁No,2「うてあう」

「相手にする」「構う」といった意味で、どちらかというと「いやいや相手をする」などマイナスの意味で使われます。
「請け合う」から変化したものと考えられていますが、「うてあうな!」とだけ強く言われる場面もあり知らない人にとっては難しい言葉だと思います。

使用例

・あんなやつうてあうな(あんなやつ相手にするな)

口頭だとわかりづらい博多弁No,3「~ばつんのうて」

「~と一緒に」という意味の博多弁です。
「~を募って」が訛ったもので、「つんのうて」と書けばなんとなく理解できると思いますが口頭でいわれるとわかりづらい言葉の一つ。

使用例

・友達ばつんのうて遊びに行く(友達と一緒に遊びに行く)

口頭だとわかりづらい博多弁No,4「のうならかす」

「(物を)なくす」という意味の言葉です。
「なくなる」が訛った「のうなる」の活用で、宮崎県高千穂でも使われます。よく「~したようだ」という意味の「ごたる(ごとある)」と合わせて「のうならかしたごたる(なくしてしまったようだ)」という使い方をします。

使用例

・家の鍵をのうならかしたごたる(家の鍵を失くしてしまったようだ)

口頭だとわかりづらい博多弁No,5「つまらん」

博多弁でいう「つまらん」は標準語の「おもしろくない」といった意味ではなく「~してはいけない」という禁止の意味で使われる場合があります。
一方で、標準語と同様に「おもしろくない」で使う場合もあるので文脈から判断する必要があります。
また、口頭では「つぁーらん」という風に崩して使うことも多いので聞き取りには注意が必要です。

使用例

・そっちに行ったらつまらん(そっちに行ってはいけない)

口頭だとわかりづらい博多弁No,6「いっちゃん・いっちょん」

パッと見同じような言葉に見えますが、使われる場面が大きく違う「いっちゃん」と「いっちょん」。
「いっちゃん」は「1番」という意味で主に順序を指す際に使われます。対して「いっちょん」は「少しも」「全然」という意味で否定語を伴って使います。
使われる場面が大きく異なるので聞き取りで混同することはありませんが、不慣れな方が博多弁を使う際には十分注意しましょう。

使用例

・今朝はいっちゃんはよ着いた(今朝は一番早く着いた)
・いっちょんしらん(少しも知らない)
・いっちょん好かん(全然好きじゃない→嫌い)

口頭だとわかりづらい博多弁No,7「えずい」

えずいは博多弁で「怖い」を表す言葉。
古語の「おずし」「おぞし」が語源とされていて老若男女問わず現在も使われています。
感動詞として使う場合「えず」の部分のみで使われることも多々あります。

使用例

・さっきのジェットコースターえずかった(さっきのジェットコースター怖かった)
・えずっ(怖っ)

口頭だとわかりづらい博多弁No,8「きない」

「黄色の」という意味の形容詞。単に「きな」の部分だけ使われることもあります。
年配の方は卵の黄身のことを「きなみ」ということも。
イントネーションは違いますが「きない服」と言われたらとっさにわからないかもしれません。

使用例

・きない家(黄色い家)
※きなみ以外に固有名詞として使われている例は見つかりませんでした。「きなこ」は古語の「黄なる粉」を語源としているのでルーツは同じ可能性があります。

番外編・博多っ子はよく漏らす!?豊富な「お漏らし」表現

なぜかお漏らしの表現が豊富な博多弁

さまざまな表現がある博多弁ですが、なぜか「お漏らし」を表す言葉が非常に多いのも特徴です。
場所の違いによる変化も含めると4種類もあり、それぞれで使い分けがされています。

・仕被る(糞尿)
・たれ被る(糞尿)
・まり被る(糞)
・ばり被る(糞)

このなかでも「まる」が古語で「排泄する」という意味であることから「まり被る」は比較的広い地域で使われているようです。
なぜこのようなバリエーションが生まれたのかは定かではありませんが、もしかしたら”そういった”事態に陥ることが多かったのかもしれませんね。

「ばい」とか「とよ」だけじゃない博多弁

冒頭でも述べた通り、博多弁人気は年々高まっておりインターネットのみならず雑誌やテレビでも取り上げられるようになりました。
しかし、そういった場で取りざたされるのは語尾につく「~ばい」や「~とよ」であったり「~ちゃ」を博多弁としているメディアも少なくありません(~ちゃは北九州弁)。
しかし、博多弁には本当に多彩な表現があります。しかも、どちらかというとマイナスの表現が多く、コテコテの博多弁は世に言う「カワイイ方言」の座から陥落してしまうかもしれません(笑)

その中でも今回は福岡に住んでいても耳にすることのないような言葉を中心にご紹介しました。
今でも呉服町や上川端、美野島など古い町並みの残る町で使われることがあるようです。県民の方は親や祖父母の世代で使われていた言葉が多いかもしれません。

県外の方も、県民の方も、この機会に古き良き博多弁に触れてみてはいかがでしょうか。

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